概要。 ホローポ(Joropo)はベネズエラの音楽と踊りの伝統で、隣国コロンビアでも、特に両国にまたがる平原地帯リャノスで親しまれています。[1][7] ペアダンスと器楽演奏に、歌や詩が織り交ぜられる祝祭文化です。[1] 両国に共通する平原地方の様式、joropo llanero(リャノス地方のホローポ)では、特に素早い足さばきが際立ちます。ほかの地域にも独自の様式があり、家族の集まりや公の祭りで踊られています。[1][7][11]
基本情報
| 発祥地・地域 | ベネズエラ。joropo llanero(リャノス地方のホローポ)は、コロンビア側のリャノスでも踊られています。[1][7] |
| 音楽 | 楽器編成は地域によって異なります。平原地方の楽団では、ハープにクアトロ(小型の4弦ギター)とマラカス(手に持って振る打楽器)を組み合わせることがよくあります。[1][7] |
| 動きの特徴 | 音楽に細やかに応じて踊るペアダンスです。リャノス地方の様式の競技会では、スピードと敏捷な足さばきが重視されます。[5][11] |
| 衣装 | 服装は地域によって異なります。コロンビアのリャノス地方に残る昔の例では、男性は帽子と淡色のズボン、女性は幅広のスカートと装飾のあるブラウスを着用しています。男女とも、植物繊維の靴底を持つ帆布製の靴、alpargatas(アルパルガタス)を履いています。[6][15] |
| 踊られる場 | ベネズエラでは家族の祝い事や、宗教祭・文化祭を含む公の集まりで踊られます。コロンビアでも大規模なホローポの催しが開かれます。[1][11] |
| パートナーとの組み方 | 互いに向き合い、少し間を空けたワルツ風のホールドから始め、ホローポ特有の動きへ進むことがあります。[1][17] |
| 関連する伝統 | 平原地方の音楽には、力強いgolpe(ゴルペ)と、より穏やかなpasaje(パサヘ)があります。地域ごとの伝統には、ベネズエラ東部のjoropo oriental(東部のホローポ)や、コロンビアのペアダンスjoropo criollo(クリオーリョ様式のホローポ)があります。[8][9][10] |
ホローポという名は、ベネズエラとコロンビアの各地で育まれた一連の地域的な伝統を指します。joropo llanero(リャノス地方のホローポ)は両国にまたがる平原文化から生まれ、ベネズエラ東部にはjoropo oriental(東部のホローポ)、ベネズエラのアンデス地方にも独自の様式があります。それぞれに音楽の特色と踊り方があり、地域全体に多彩な音とスタイルが広がっています。[1]
起源と歴史
ホローポは、ベネズエラで先住民とアフリカ系・ヨーロッパ系の人々が歴史的に接する中で発展しました。[1] スペインとのつながりには、スペイン南部アンダルシアの伝統や、古くからあるスペインの踊りとその伴奏音楽であるfandango(ファンダンゴ)が含まれます。[13][16] スミソニアン・フォークウェイズは、平原地方の音楽に見られる反復的で力強いリズムには、奴隷にされたアフリカ人とその子孫の影響が反映されている可能性も指摘しています。[7]
ルイス・フェリペ・ラモン・イ・リベラは、ホローポが1700年代後半から1800年代前半にかけて、現在につながる形を取ったと提唱しました。[13] その後、独自の音楽性と踊り方を持つ地域ごとの伝統が発展しました。[1]
その一つが、リャノスの共通文化に根差したjoropo llanero(リャノス地方のホローポ)です。オリノコ川周辺の広大な草原はコロンビア東部からベネズエラ西部に広がり、llanero(リャネロ)はこの地方やその人々を指します。[7] コロンビアでは、アラウカ、カサナレ、メタ、ビチャダ、グアビアレの各県でこの伝統が受け継がれています。[4]
20世紀には、平原地方の音楽がはるかに広い聴衆に届くようになりました。1940年代後半から1970年代にかけて、録音とラジオがベネズエラの演奏家の人気を高めました。テレビと映画もその広がりを後押しし、すでに存在していた地域の伝統をより多くの人々に伝えました。[7]
近年、両国はそれぞれのホローポの伝統を正式に認めています。2019年、ベネズエラは生きた文化的伝統を記録する国家無形文化遺産目録にホローポを加えました。[2] コロンビアでは、2025年7月31日付の法律第2509号により、joropo llaneroの踊りと音楽が国の無形文化遺産として認定されました。[4] 同じ2025年には、ユネスコが「ベネズエラのホローポ」を人類の無形文化遺産の代表的な一覧表に記載しました。[2]
ステップと踊りの特徴
カップルは、互いに向き合い少し間を空けたワルツ風のホールドから始め、ホローポ特有のステップへ進むことがあります。[1][17] リャノス地方の様式の指導では、音楽を聴くことが動きの中心になります。踊り手は音楽の変化を聞き分け、ステップで応じることを学びます。[5]
足さばきを理解するうえで、二つの用語が役立ちます。zapateo(サパテオ)は、足音でリズムを刻む踏み鳴らしです。escobillao(エスコビジャオ)は、足を短く前後に動かし、床を掃くように擦ります。前者は足でリズムを鳴らし、後者は足を低く保って滑らせる点が対照的です。[17]
joropo llaneroでは、踊り手は足さばきの合図となる音楽上のla cuerda(ラ・クエルダ)に従います。[5] 伝統的な一連の動きでは、カップルは足を低く滑らせるステップから、男性が足を踏み鳴らしてリズムを刻み、女性が足で床を擦る部分へ移ります。その後、再び滑らせるステップに戻り、次の足さばきへ進みます。[19] 踊り手は音楽中の異なる合図に応じるため、同じフロアのカップルが必ずしも同時に踏み鳴らしを始めるわけではありません。[18]
競技会では、その速さが目を引きます。コロンビアのリャノス地方にある都市ビジャビセンシオの国際ホローポ大会では、カップルが俊敏なzapateo(足を踏み鳴らす動き)を交えた高速の一連のステップを披露します。[11] 踊りの感覚をつかむには、パートナー同士のつながりを見ながら、音楽の変化を聴いてみてください。ステップと音の関係は、速さだけを見るよりも踊りの特色をよく伝えてくれます。[1][5]
音楽と楽器
ホローポの響きは地域によって変わります。ユネスコによるベネズエラの記録には、ハープ、クアトロ、マラカスが挙げられています。そこに記された地域の楽器文化には、バイオリンやアコーディオンも登場します。[1]
商業録音を通じて広まった平原地方の音楽では、ハープやbandola llanera(バンドラ・リャネラ)が旋律を担うことがよくあります。バンドラ・リャネラは、ピックで弾く小型の4弦楽器です。小型の4弦ギターであるcuatro(クアトロ)がリズム伴奏を受け持ち、マラカスが基本の編成を完成させます。後にはアコースティックベースやエレクトリックベースも加わるようになりました。[7]
クアトロをかき鳴らす音は、ときに太鼓のように聞こえます。マラカスは手に持って振る楽器で、種や小石を入れたひょうたんで作られることがよくあります。熟練した奏者は複雑なリズムや繊細な音色の変化を生み出します。こうした楽器が一体となって、踊り手が足で応じられるリズムの土台を作ります。[7]
歌と詩も、この幅広い伝統の一部です。歌は恋愛や自然を題材にすることもあれば、日常の出来事をユーモラスに描いたり、暮らしを語ったりすることもあります。[1] そのためホローポは、単なる踊りの器楽伴奏にとどまらず、人々が共に楽しむ音楽の祝祭でもあります。[1]
踊り手も音を生み出します。スミソニアン・フォークウェイズの記事で、音楽家カルロス・ロハス・エルナンデスは、足さばきを農村の社交的なホローポに欠かせない要素と説明しています。音楽家が踊り手なしでコンサートの舞台に立つと、そのリズムの層が失われます。変わるのは見た目だけではなく、観客に聞こえる音も変わるのです。[7]
衣装と舞台での表現
ホローポに共通の衣装は一つではなく、服装には地域や踊る場が反映されます。リャノス地方に関する1972年のコロンビアの記録では、男性は淡色のズボンとシャツに、つばの広い帽子を合わせています。女性は鮮やかな色や柄の幅広のスカートに、淡色の装飾されたブラウスを着ています。男女とも、植物繊維の靴底を持つ伝統的な帆布製の靴、alpargatas(アルパルガタス)を履いています。[6][15]
ユネスコの写真には、ベネズエラのアンデス山脈にあるメリダ州のアンデス地方のホローポで、色鮮やかな衣装を着た人々も写っています。[3]
地域ごとの様式と関連する音楽
ベネズエラとコロンビアでは、ホローポの名のもとに、地域の特色を映した複数の踊りと音楽の伝統が受け継がれています。[1][9][10]
その一つが、ベネズエラ東部の伝統であるjoropo oriental(東部のホローポ)です。弦楽器を中心とする音楽で、演奏者がその場で音楽的な着想を形にする即興が盛んです。競技会でよく見られる平原地方の様式とは、響きも取り組み方も異なります。[9]
もう一つのjoropo criollo(クリオーリョ様式のホローポ)は、コロンビアのホローポの伝統に属するペアダンスです。[10]
平原地方の音楽では、力強く推進するgolpe(ゴルペ)と、よりゆっくりした旋律的なpasaje(パサヘ)が対照をなします。これらは決まったステップの順序ではなく、音楽の形式を表す名前です。[8] 踊り手は、勢いのある部分と穏やかな歌の違いに耳を傾けることで、この対照を感じ取れます。[8]
現在、体験できる場所
ベネズエラでは、ホローポは一年を通じた人々の暮らしの一部です。家族の祝い事や、宗教祭・文化祭を含む公の集まりで踊られます。宴が数日間続くこともあり、幅広い年齢の人々が参加します。[1] こうした場では、踊り自体が祝いの一部であり、舞台公演を鑑賞するのとは違った体験ができます。[1]
ビジャビセンシオでは、1962年に始まった国際ホローポ大会が毎年開かれます。プログラムにはダンス競技のほか、歌唱と器楽のコンテストもあります。ペアによる高速の演技では、競技としてのリャノス地方の足さばきを見られますが、それは幅広い伝統の一部です。[11]
ホローポはリャノス以外の観客にも届いています。ボゴタでは、2025年の「Joropo al Parque」で伝統的な様式と革新的な様式の両方が披露されました。[12] 初心者が参加しやすい催しもあります。ビジャビセンシオで2025年に開かれた地域参加型のホローポ・マラソン「Gran Maratón de Joropo」には、基本ステップを紹介する「Joropo Express」のセッションが含まれていました。[14] これらは過去のプログラムの例です。今後の日程や講座は、主催者の最新の案内をご確認ください。
よくある質問
ホローポはどのように習いますか?
ホローポは、音楽を聴き、ほかの人の踊りを見てから、実際に動きを試して学ぶことがよくあります。家族や地域の人々が知識を伝える一方、ホローポの学校でも子ども向けに体系的な指導が行われています。[1]
正しい踊り方は一つだけですか?
いいえ。ホローポには、それぞれ独自の演奏法と踊り方を持つ複数の地域的な伝統があります。平原地方の様式もその一つで、ベネズエラ東部のjoropo oriental(東部のホローポ)も別の一つです。[1][9]
ホローポは踊りだけですか?
いいえ。踊りは、音楽と歌われる詩を含む、より広い伝統の一部です。歌は日常生活の物語を伝えたり、恋愛や自然への思いを表したりします。[1]
参考文献
- UNESCO (2025), Joropo in Venezuela. https://ich.unesco.org/en/RL/joropo-in-venezuela-02092
- UNESCO (2025), Decision of the Intergovernmental Committee: 20.COM 7.b.1, Joropo in Venezuela. https://ich.unesco.org/en/Decisions/20.COM/7.b.1
- UNESCO (2025), Photographs: Joropo in Venezuela. https://ich.unesco.org/fr/7b-liste-representative-01412?call=slideshow&id=02092&include=slideshow_inc.php&mode=scroll&width=620
- Cámara de Representantes de Colombia (2025), JOROPO, Proyecto de ley / Ley 2509 del 31 de julio de 2025. https://www.camara.gov.co/joropo-1198/
- Instituto Distrital de las Artes (Idartes), Bogotá (2024), Taller: El Joropo llanero, sus variables y apropiación son. https://www.idartes.gov.co/es/agenda/taller/el-joropo-llanero-sus-variables-y-apropiacion-son
- Banco de la República de Colombia / Banrepcultural (1972), Bailarines de joropo. https://babel.banrepcultural.org/digital/collection/hernan-diaz/id/807/
- Smithsonian Folkways Recordings, Smithsonian Institution (2011), ¡Cimarrón! Joropo Music from the Plains of Colombia. https://folkways.si.edu/magazine-summer-2011-cimarron-joropo-plains-colombia/latin-world/music/article/smithsonian
- Smithsonian Folkways Recordings, Smithsonian Institution (2011), Grupo Cimarrón perform ‘Zumbaquezumba’ (Resound, Resound). https://folkways.si.edu/zumbaquezumba/latin-world/music/video/smithsonian
- Smithsonian Folkways Recordings, Smithsonian Institution (2009), Y Que Viva Venezuela! Maestros del Joropo Oriental. https://folkways.si.edu/y-que-viva-venezuela-maestros-del-joropo-oriental/latin-world/music/album/smithsonian
- Smithsonian Folklife Festival, Smithsonian Institution (2011), Grupo Cabrestero. https://festival.si.edu/2011/colombia/participant-portfolios/grupo-cabrestero/smithsonian
- Fondo Nacional de Turismo de Colombia (FONTUR) (2024), Festival Internacional del Joropo. https://calendarioferiasyfiestas.fontur.com.co/agenda/festival-internacional-del-joropo
- Alcaldía Mayor de Bogotá / Bogota.gov.co (2025), Entre cantos recios y zapateo, se vivió el cierre de Joropo al Parque 2025. https://bogota.gov.co/mi-ciudad/cultura-recreacion-y-deporte/bogota-celebro-el-cierre-de-la-cuarta-edicion-de-joropo-al-parque2025
- Universidad Andina Simón Bolívar, Sede Ecuador (2014), Joropo: sonoridades de la vida, estéticas de la existencia. https://repositorio.uasb.edu.ec/bitstream/10644/4277/1/TD052-DECLA-Joropo-Lambuley.pdf
- Alcaldía de Villavicencio (2025), Corcumvi invita a la gran maratón de joropo para fortalecer la identidad llanera en Villavicencio. https://villavicencio.gov.co/corcumvi-invita-a-la-gran-maraton-de-joropo-para-fortalecer-la-identidad-llanera-en-villavicencio/
- Real Academia Española および Asociación de Academias de la Lengua Española, Alpargata. Diccionario de la lengua española. https://dle.rae.es/alpargata
- Real Academia Española および Asociación de Academias de la Lengua Española, Fandango. Diccionario de la lengua española. https://dle.rae.es/fandango
- Venezuela Tuya, El joropo. ペアダンスと足さばきの説明。 https://www.venezuelatuya.com/tradiciones/el_joropo.htm
- Ministerio de Cultura de Colombia / Sistema Nacional de Información Cultural (SINIC), Colombia Cultural: Danza – Casanare. https://www.sinic.gov.co/SINIC/ColombiaCultural/ColCulturalBusca.aspx?AREID=3&COLTEM=221&IdDep=85&SECID=8
- Ministerio de Cultura de Colombia / Sistema Nacional de Información Cultural (SINIC), Colombia Cultural: Danza – Arauca. https://www.sinic.gov.co/SINIC/ColombiaCultural/ColCulturalBusca.aspx?AREID=3&COLTEM=221&IdDep=81&SECID=8